結論

資金計画の起点は売却価格ではなく「手残り」です。売却価格からローン残債と諸費用を引いた額が、実際に住み替えに使えるお金です。ここを混同すると、計画が数百万円単位でずれます。

当てはまるのは、今の家を売って住み替えることを検討している場合です。

例外:今の家を売らずに賃貸に出す場合、この記事の計算式は使えません。家賃収入と経費の見通しが必要になります。

この記事で扱わないこと

  • 譲渡所得税の税額計算。売却益が出た場合に税金がかかる可能性がありますが、金額の計算も、控除制度が使えるかどうかの判断も、この記事では行いません。必ず税務署または税理士にご確認ください
  • 個別の金融商品・保険商品の推奨
  • 年金受給額の試算(ねんきん定期便・ねんきんネットでご確認ください)
  • 相続を前提とした資産設計

手残りの計算式

この順序で計算します。

売却見込額
 − ローン残債
 − 売却の諸費用
 − 税金(可能性がある場合。金額は専門家に確認)
─────────────────
 = 手残り

手残り + 手元資金 = 住み替えに使える総額

ステップ1:売却見込額を、幅で把握する

1社の査定額だけで決めないでください。査定額は会社によって差が出るため、複数社の査定を取って「上限と下限の幅」を知ることが目的になります。

計画は下限側の金額で立ててください。上限で計画を立てると、実際に売れたときに足りなくなります。

▶ 今の家がいくらで売れるか把握する方法

ステップ2:ローン残債を確認する

金融機関から届く返済予定表、または残高証明書で確認します。ネットバンキングで確認できる場合もあります。

「あと数年で終わるはず」という記憶ではなく、書面の数字を使ってください。

ステップ3:売却の諸費用を引く

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費目 内容
仲介手数料 売買価格が400万円を超える場合、売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税が宅地建物取引業法上の上限
印紙税 売買契約書に貼付
抵当権抹消費用 ローンが残っている場合
測量・境界確定費用 必要な場合
家財の処分費用 実際にはこれが大きくなることがあります
引越し費用 仮住まいを挟む場合は2回分

▶ 住み替えにかかる費用の全項目リスト

ステップ4:税金の可能性を確認する(金額は確定させない)

売却益が出た場合、譲渡所得税がかかる可能性があります。控除の制度もありますが、適用できるかどうかは所有期間・居住実態・過去の適用歴などの個別条件によります。

この段階でやるべきことは、金額を出すことではなく「かかる可能性があるかどうか」を確認することです。

確認先:

  • 所轄の税務署(無料で相談できます)
  • 税理士
  • 自治体で実施している無料税務相談

不動産会社の担当者の説明を、そのまま最終判断にしないでください。税務の判断は税理士の領域です。


住み替え後に資金が尽きないかを確認する

手残りが分かったら、次は「その後の毎月」を見ます。購入できるかどうかより、購入した後に暮らせるかどうかの方が重要です。

収入側

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項目 確認方法
公的年金 ねんきん定期便/ねんきんネット
企業年金・iDeCo等 各制度の通知
就労収入 いつまで続ける見込みか
その他 家賃収入など

支出側(住み替え後)

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項目 戸建てへ マンションへ 賃貸へ
住居費 固定資産税・保険・修繕積立 管理費・修繕積立金・固定資産税 家賃・共益費・更新料
光熱費 面積で変わる 面積で変わる 面積で変わる
医療・介護 年齢とともに増える 同左 同左
生活費 立地で変わる(車の有無) 同左 同左

マンションに住み替える場合、管理費・修繕積立金は一生続く固定費です。しかも将来値上がりする前提で計画されているのが通常です。現在額ではなく、値上げ後の額で試算してください。

▶ 中古マンションの管理費・修繕積立金で確認すべきこと

確認する3つの数字

  1. 毎月の収支 ── 年金等の収入から、住居費を含む支出を引いた額
  2. 手元に残る資金 ── 住み替え後に残る預貯金
  3. 不足が出る場合、いつまで持つか ── 毎月の赤字額で、手元資金を割った年数

3つ目が最も重要です。毎月赤字でも、手元資金で20年持つなら成立する場合があります。逆に、収支が黒字でも手元資金がゼロなら、突発的な支出に対応できません。


退職金の扱い

退職金を住み替えに使ってよいかは、手元にいくら残すかで決まります。

考えておく必要があるもの:

  • 医療・介護で必要になる可能性のある資金
  • 住み替え先でも発生する修繕・更新の費用
  • 配偶者が一人になった場合の生活費
  • 想定外の支出への備え

「使ってよい額」を先に決めてから、住み替えの予算を組んでください。予算に合わせて手元資金を削る順序にすると、備えが薄くなります。

▶ 住み替えの資金に退職金を使ってよいか


資金計画シート

▶ 住み替え資金計画シート

売却想定額・ローン残債・退職金・年金を入れると、手残りと住み替え後の月次収支を計算します。印刷できます。メールアドレスの登録は不要です。

▶ 60代で住宅ローンは組めるか ▶ 住宅ローンが残っている家から住み替える手順 ▶ 60代の住み替え、判断から実行までの全体像

執筆者

河田邦昭かわた くにあき

1987年生まれ。千葉県で育ち、東京都を経て現在は神奈川県在住。戸建てとマンションの両方を購入し、県をまたぐ住み替えを2度経験しています。不動産・税務の資格は持っていません。

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