結論

住宅ローンが残っていても住み替えはできます。分岐点は「売却代金でローンを完済できるか」で、できる場合とできない場合で手順がまったく変わります。まず残債と売却見込額を並べてください。

当てはまるのは、住宅ローンの返済を継続しており、滞納がない場合です。

例外:返済が滞っている場合、この記事の手順は使えません。任意売却など別の枠組みになるため、まず借入先の金融機関に相談してください。滞納を放置したまま売却を進めることはできません。

この記事で扱わないこと

  • 任意売却・競売の手続き
  • 税金の計算や控除制度の適用判断(税務署・税理士にご確認ください)
  • 特定の金融機関・不動産会社の推奨
  • 審査に通るかどうかの判断

前提:なぜ残債があると手順が変わるのか

住宅ローンが残っている家には、金融機関の抵当権が設定されているためです。

家を売るには、この抵当権を抹消する必要があります。抵当権を抹消するには、原則としてローンを完済しなければなりません。

つまり住み替えの手順は、次の1点で分岐します。

売却代金 − 売却の諸費用 ≧ ローン残債  →  A. 完済できる
売却代金 − 売却の諸費用 <  ローン残債  →  B. 完済できない(オーバーローン)

ステップ1:残債と売却見込額を並べる

残債を確認する

書面で確認してください。記憶や概算は使いません。

  • 返済予定表
  • 残高証明書
  • 金融機関のネットバンキング

確認するのは「現在の残高」ではなく「売却予定時期の残高」です。売却まで半年かかるなら、その時点の残高を返済予定表から読み取ります。

売却見込額を、幅で把握する

複数社の査定を取り、上限と下限の幅を知ります。計画は下限側で立ててください。

▶ 今の家がいくらで売れるか把握する方法

諸費用を引く

仲介手数料(400万円超の売買価格の場合、売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税が宅建業法上の上限)、印紙税、抵当権抹消費用など。

▶ 住み替えにかかる費用の全項目リスト


パターンA:売却代金で完済できる場合

手順は通常の住み替えとほぼ同じです。

  1. 金融機関に、売却して完済する意向を伝える
  2. 不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を始める
  3. 買主が決まり、売買契約を結ぶ
  4. 決済日に、売却代金でローンを一括返済し、同時に抵当権を抹消する
  5. 引き渡し

4の手続きは、決済の場で同時に行われます。司法書士が立ち会い、代金の受領・返済・抵当権抹消・所有権移転が同じ日に処理されます。自分で別々に手続きする必要はありません。

確認すること:

  • 繰上返済(一括返済)の手数料があるかどうか
  • 完済に必要な書類と、その準備期間
  • 火災保険の解約と返戻金の手続き

パターンB:売却代金で完済できない場合

差額を用意する必要があります。方法は3つです。

B-1. 手元資金で差額を埋める

最も単純です。預貯金や退職金から差額を補填して完済します。

ただし、手元資金を使い切らないでください。住み替え先の費用と、その後の生活資金が別に必要です。

B-2. 住み替えローン(買い替えローン)を使う

残債と新居の購入資金を、まとめて借りる商品です。取り扱っている金融機関があります。

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利点 注意点
手元資金がなくても住み替えられる 借入額が新居の価格を超えるため、審査が厳しくなる
手続きが一本化される 新居の担保価値を超える借入になり、次の売却が難しくなる
60代では完済時年齢の制約が重なる

60代でこの選択肢を採る場合、完済時年齢の上限と重なって条件が厳しくなります。利用できるかどうかを早い段階で金融機関に確認してください。

▶ 60代で住宅ローンは組めるか

B-3. 売却を見送る

差額を用意できず、住み替えローンも使えない場合、今回は売却しないという判断になります。

その場合の選択肢:

「売れないから住み替えられない」ではなく、「売る以外の方法で住まいを変えられないか」に切り替えて考えてください。


ステップ2:金融機関への相談を先に行う

不動産会社より先に、借入先の金融機関に相談してください。理由は2つあります。

  1. 完済の条件・手数料・必要書類は金融機関にしか分かりません
  2. 住み替えローンを検討する場合、借りられるかどうかで進め方が変わります

不動産会社に相談してから金融機関に行くと、前提が違っていて計画をやり直すことがあります。


ステップ3:売り先行を選ぶ

残債がある場合、原則として売り先行です。

買い先行にすると、今の家のローンと新居の支払いが一時的に重なります。売却が長引いた場合、その期間が延びます。残債がある状態での買い先行は、退路がなくなるリスクが大きくなります。

▶ 売り先行と買い先行、どちらを選ぶか


手順のまとめ

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順 やること 相談先
1 残債を書面で確認 金融機関
2 売却見込額を複数社で把握 不動産会社
3 諸費用を引いて、完済できるか判定 —
4 完済の条件・手数料を確認 金融機関
5 完済できない場合、差額の手当てを検討 金融機関
6 税金がかかる可能性の有無を確認 税務署・税理士
7 売り先行で売却活動を開始 不動産会社

6を飛ばさないでください。売却益が出た場合、税金がかかる可能性があります。金額も適用制度も個別の条件によるため、税務署または税理士に確認してください。

▶ 住み替えの資金計画:売却代金・退職金・年金の組み立て方 ▶ 60代の住み替え、判断から実行までの全体像

執筆者

河田邦昭かわた くにあき

1987年生まれ。千葉県で育ち、東京都を経て現在は神奈川県在住。戸建てとマンションの両方を購入し、県をまたぐ住み替えを2度経験しています。不動産・税務の資格は持っていません。

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