結論
貸すという選択肢は「売りたくない」「売りにくい」場合に有効ですが、貸した時点で家主としての責任と手間が発生します。家賃収入が丸ごと手元に残るわけではありません。
当てはまるのは、住み替え先が決まっており、今の家を手放すかどうか迷っている場合です。
例外:住宅ローンが残っている場合、そのまま賃貸に出すことは原則としてできません。住宅ローンは自分が住むことを条件とした借入のためです。必ず借入先の金融機関に相談してください。無断で貸すと契約違反になります。
この記事で扱わないこと
- 税務の判断(家賃収入は不動産所得となり、確定申告が必要になる場合があります。金額の計算も申告の要否判断も、税務署または税理士にご確認ください)
- 特定の管理会社・仲介会社の推奨
- 家賃相場の提示
- 賃貸借契約の法的解釈
どんなときに検討する価値があるか
次のいずれかに当てはまる場合です。
← 横にスクロールできます →
| 状況 | 貸すことの意味 |
|---|---|
| 売却額が想定より低い | 売り急がずに済む |
| 家族に思い入れがあり、手放しにくい | 所有を続けられる |
| いずれ戻る可能性がある | 選択肢を残せる |
| 子どもが将来住む可能性がある | 資産を維持できる |
| 立地が良く、借り手が見込める | 収入源になる |
逆に、次の場合は貸すことが難しくなります。
- 借り手が付きにくい立地(駅から遠い、需要が少ない地域)
- 建物の劣化が進んでおり、貸す前に修繕が必要
- 面積が大きすぎて、家賃が高くなり借り手が限られる
- 遠方に住み替えるため、管理に手が回らない
家賃がそのまま収入になるわけではない
最も誤解されやすい点です。家賃から差し引かれるものがあります。
← 横にスクロールできます →
| 費目 | 内容 |
|---|---|
| 管理委託手数料 | 管理会社に任せる場合、家賃の一定割合 |
| 修繕費 | 設備が壊れたら家主の負担で直します |
| 固定資産税・都市計画税 | 引き続き家主が負担 |
| 火災保険 | 賃貸用の契約に切り替えが必要 |
| 原状回復費 | 退去時に発生することがある |
| 空室期間の損失 | 借り手がいない期間は収入がゼロ |
| 確定申告の手間・費用 | 税理士に依頼する場合の費用 |
「空室期間の損失」と「修繕費」を計算に入れていないケースが多くあります。
給湯器やエアコンが壊れれば、家主が交換します。入居者が退去すれば、次が決まるまで収入はありません。家賃の額面だけで判断すると、実際の手残りとの差に驚くことになります。
貸すことは、家主になること
所有を続けるということは、責任を持ち続けるということです。
発生すること:
- 設備の故障への対応(時間帯を選びません)
- 入居者からの問い合わせ・苦情
- 家賃の滞納が起きた場合の対応
- 契約の更新手続き
- 退去時の立ち会いと原状回復の判断
- 毎年の確定申告
管理会社に委託すればこれらの多くを任せられますが、その分の手数料が発生します。また、最終的な判断(修繕するかどうか、いくらかけるか)は家主が行います。
60代以降で、住み替え先の生活を落ち着かせたい時期に、この負担を負えるかどうかが判断の分かれ目です。
貸す前に確認する5つのこと
1. 住宅ローンの残債があるか
残債がある場合、まず借入先の金融機関に相談してください。
住宅ローンは自分が居住することを前提とした借入です。無断で賃貸に出すと契約違反となり、一括返済を求められる可能性があります。
事情によっては、賃貸を認めてもらえる場合や、賃貸用のローンへの借り換えができる場合があります。必ず事前に相談してください。
2. 借り手が見込める立地か
複数の賃貸仲介会社に、「この物件は貸せるか」「家賃はいくらが妥当か」「どのくらいで決まりそうか」を聞いてください。
「決まるまでの期間」の見立てが最も重要です。空室期間が長い前提なら、収支が成り立ちません。
3. 貸す前にいくら修繕が必要か
現状のままでは貸せないことがあります。
- 設備の更新(給湯器、水回り)
- 内装の補修・クリーニング
- 場合によっては全体のリフォーム
この初期費用を回収するのに何年かかるかを計算してください。回収前に貸すのをやめると、費用だけが残ります。
4. 税務上、何が必要になるか
家賃収入は不動産所得となり、確定申告が必要になる場合があります。
本記事では、申告の要否も税額も扱いません。次のいずれかにご確認ください。
- 所轄の税務署(無料で相談できます)
- 税理士
- 自治体の無料税務相談
貸し始めてから調べるのではなく、判断の段階で確認してください。
5. 出口をどう考えるか
いつまで貸すのか、最終的にどうするのかを先に考えてください。
- 数年後に売る予定か
- 子どもに引き継ぐのか
- 自分が戻る可能性を残すのか
入居者がいる状態での売却は、空き家の状態より価格が下がることが一般的です。「いずれ売る」つもりなら、貸すことでその価格が下がる可能性があります。
売る・貸す・住み続けるの比較
← 横にスクロールできます →
| 売る | 貸す | 住み続ける | |
|---|---|---|---|
| まとまった資金 | 得られる | 得られない | — |
| 継続収入 | なし | あり(変動する) | — |
| 手間 | 売却時のみ | 継続的に発生 | 維持管理のみ |
| 資産 | 残らない | 残る | 残る |
| 責任 | 引き渡しで終わる | 続く | 続く |
| 税務 | 譲渡所得の可能性 | 毎年の確定申告 | — |
「貸す」は、売ると住み続けるの中間ではありません。手間と責任という点では、住み続けるより重くなることもあります。
▶ 住み替える人・住み続ける人を分ける6つの条件 ▶ 今の家がいくらで売れるか把握する方法 ▶ 住宅ローンが残っている家から住み替える手順