結論

同時に動かそうとすると、どちらも決まりません。原則として、緊急度の高い方を先に決め、もう一方は判断材料だけ揃えて保留にしてください。

当てはまるのは、自分自身の住み替えを検討していて、同時に親の実家の問題も出てきている場合です。

例外:親が施設への入居を決めているなど、実家の扱いに期限がある場合は、実家が先になります。期限のある方が優先です。

この記事で扱わないこと

  • 相続・遺産分割に関する判断(司法書士・弁護士・税理士にご相談ください)
  • 相続税や譲渡所得税の計算、控除制度の適用判断(税務署・税理士にご確認ください)
  • 空き家の管理・活用に関する制度の詳細
  • 介護の方針に関する判断

なぜ同時に来るのか

50代後半から60代にかけて、2つの変化が重なりやすいためです。

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自分側 親側
子どもが独立する 親が80代に入る
定年・再雇用 実家の維持が負担になる
自宅の設備更新が重なる 親の体調に変化が出る
老後の住まいを考え始める 一人暮らしになる

どちらも「そろそろ考えないと」という段階で、緊急ではない。これが最も動きにくい状態です。両方が気にかかり、どちらにも着手できません。


どちらを先に決めるか

判断基準は「期限があるかどうか」です。緊急度で決め、重要度では決めません。

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状況 先に決めるもの
親が施設入居を決めている/決まっている 実家
実家がすでに空き家になっている 実家
親の健康状態に不安があり、判断能力が失われる可能性がある 実家(本人の意思が必要なため)
自宅の設備更新が目前に迫っている 自宅
自宅の住み替えに、資金面の期限がある(ローン年齢など) 自宅
どちらにも期限がない 自宅(自分の判断だけで進められるため)

最後の行が重要です。どちらにも期限がない場合、自分の住み替えを先にしてください。自分の判断だけで進められるからです。

実家は、親の意思、きょうだいの合意、親族の事情が絡みます。関係者が多い方を後にすると、進みます。


「親の判断能力」という期限

明示されない期限として、最も重いのがこれです。

親が認知機能を失った場合、本人の意思による売却ができなくなります。成年後見制度を使うことになり、手続きと時間の負担が大きく変わります。

つまり、親が元気なうちに「実家をどうするか」の意思を確認しておくことが、期限のある行動になります。

やること:

  • 実家をどうしたいか、親の考えを聞いておく
  • 売る意思があるかどうかだけでも確認する
  • きょうだいで、その内容を共有する

この段階では、実際に売る必要はありません。意思を確認して記録しておくだけで、後の選択肢が変わります。

▶ 親に住み替えの話を切り出すタイミングと伝え方


保留にする側で、やっておくこと

「保留」は「何もしない」ではありません。判断材料だけ揃えます。

実家を保留にする場合

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やること 理由
実家の維持費を把握する 空き家になった場合の負担が分かる
名義を確認する 親単独か、共有か。共有なら全員の同意が必要
境界・測量図の有無を確認する 売却時に必要になる
親の意思を確認する 判断能力があるうちに
きょうだいで方針を共有する 後の合意形成が速くなる

名義の確認を先にしてください。祖父母の代の名義のままになっているケースがあり、その場合は売却の前に相続登記が必要になります。手続きに時間がかかるため、早く分かるほど選択肢が広がります。

名義は法務局で登記事項証明書を取得すれば確認できます。手続きの詳細と、必要になる対応は司法書士にご相談ください。

自宅を保留にする場合

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やること 理由
維持費を20年分試算する 判断のとき、すぐ動ける
査定を取って手残りを知る 同上
配偶者と方針を話しておく 合意形成に時間がかかるため

▶ 戸建て維持費シミュレーター


実家を自分の住み替え先にする場合

「実家に戻る」という選択肢が出てくることがあります。

検討すべきこと:

  • 実家の立地が、老後の生活条件を満たすか(思い出ではなく条件で判断してください)
  • 建物の状態と、必要な改修の規模
  • きょうだいがいる場合、その合意
  • 名義をどうするか(相続・贈与のいずれも税務と法務が絡みます。必ず専門家に相談してください)
  • 自分の現在の家をどうするか

最も注意すべきは、感情で判断しやすいことです。育った家に戻ることには、条件の比較を超えた引力があります。

他の選択肢と同じチェックリストで評価してください。

▶ 住み替え先の内見で必ず見る20項目 ▶ 車を手放しても暮らせる家の条件


きょうだいがいる場合

自分の住み替えと実家の話を、混ぜないでください。

自分の住み替えの都合で実家の話を持ち出すと、「自分の事情で実家を動かそうとしている」と受け取られます。きょうだい間の信頼が損なわれると、実家の話が長期間止まります。

進め方:

  1. 自分の住み替えは、自分(と配偶者)で決める
  2. 実家の話は、親の状況を起点として別に持ち出す
  3. 2つを同じ場で話さない

▶ 住み替えで後悔した7つのケースと回避策 ▶ 60代の住み替え、判断から実行までの全体像

執筆者

河田邦昭かわた くにあき

1987年生まれ。千葉県で育ち、東京都を経て現在は神奈川県在住。戸建てとマンションの両方を購入し、県をまたぐ住み替えを2度経験しています。不動産・税務の資格は持っていません。

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